来 歴

巨人

私は川の葦よりもつと伸びるだろう
と言つた  そして伸びた
私は庭の葉のしげみよりもつと伸びるだろう
と言つた  そして伸びた
私は森の喬木よりもつと伸びるだろう
と言つた  だが今度は伸びなかつた
この世には人間の身体に
ぴつたりあてはまる背丈しか
用意されてはいないのだ
私の中身は無限に伸びて
空と肩を並べて立ちたかつたのに
だがしかし年とともに
伸びる身体を持つているとしたら
それは大仕事だ
要は中身の問題になるから
年とともに輝きを増す魂がいるのだ
そうなると身体は人間の問題を離れる
すぐに勘定をまちがえる身体と
故障し易い魂しか持つていない人間が
空と肩を並べる巨人にならない方がよいとは
そんな理由からなのだ

原文のまま っがつとなっています。


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